1999.2.3−3.17

　2度目のニュージーランド、もちろん今回もトランピング（トレッキング）が目的。2ケ月弱という期間でしたが、南島にある4つのコースを歩いてきました。
　天然温泉目当てで行った、Walmakariri-Harman Pass Route と Harper Pass Route。このふたつは南島のアーサーズ・パス・ナショナルパークにあります。
　それと世界最大の歴史的木造陸橋の上を歩ける Waitutu Tracks と、氷河の景色がすばらしい Rees-Dart Track。
　Rees-Dart Track は比較的有名なので聞いたことがあるかもしれませんが、他はややマニアックなコースです。

　まず、アーサーズパスの温泉の話からはじめましょうか。
　アーサーズ・パス・ナショナルパーク Arthur's Pass National Park というのは、南島のクライストチャーチ Christchurch とグレイマウス Greymouth の間に位置しています。集落（村）の規模は小さいのですが、本格的な山岳風景と、たくさんのハット（山小屋）とコースの充実で、トランパーにはひそかに人気の高い場所です。
　今回なにより目をつけたのが、このあたりのあちこちに湧いている天然温泉。
　たとえばこんなかんじです。

Otehake Riverに湧く温泉

　この写真は国道から歩いて6時間ほどのところにあるオテハケ川のほとりに湧く温泉 Otehake Hot Springs の様子です。Otehake River の中州というか小島の水際に湧いている温泉で、小島の森のなかにテントを張ると自分だけのプライベート温泉付きキャンプサイトのできあがり。
もちろんガイドブックには載ってないし、たぶん年間をとおしても数えるくらいしか訪れないことでしょう。
　温泉までのルートはややハードです。川の渡渉が多くて、日照りのときでさえ腿くらいの水位。ちょっとでも雨が降るとすぐに首くらいまでになってしまいます。
　そのほか、この地方で2つの温泉に行ってきましたが、どちらもルート的に難しくて一般の人にお奨めできるようなところはありませんでした。ニュージーランドの気候に慣れていて、ルーファインデイング、リバークロツシングのテクニックがある人にはとてもいいところなんですけどね。

Otira RiverのCrossing。事故が多いので有名

　アーサーズ・パスの山中で2週間ほど歩いたあと、南島の南端にあるワイトゥトゥ・トラック Waitutu Tracks へ行きました。
　このトラックは昔の林業トロッコの名残で　現在世界最大といわれる木造建築の陸橋が残っています。Percy Burn Viaduct は高さ36m、長さ125m。現在はトランピング・トラックの一部として上を歩くことができます。いちおう手すりはあるものの、足元はスカスカで、はっきりいって怖いです。高所恐怖症の人は渡れないかも。
　トラックとしてきちんと整備されているので、ふつうの体力のある人ならだれでも行かれます。海沿いを歩く部分が多いので、アワビをはじめ、いろんな貝が採れる、それもこのトラックの魅力のひとつです。

世界最大の木造陸橋 Percy Burn Viaduct

　最後に歩いたのがリーズダート・トラック Rees-Dart Track。ニュージーランドで山歩きをする人なら誰でも名前くらいは聞いたことがある有名なコースです。
　これまで有名どころといえば、ルートバーン・トラックなどがっかりさせられた場所が多かったので、あまり期待していませんでしたが、ここばかりは文句のつけどころのないほどすばらしいトラックでした。
　なによりその景色のダイナミックさ。次から次へと現われる氷河と刻々とかわる雰囲気。それでいてコースは難しくない。余計なことは考えずに純粋に歩くことを楽しめます。山小屋も立派で、場所によっては水洗トイレ（with トイレットペーパ）なんてことも。はっきりいってルートバーンに行くなら絶対こっちのほうがいい。
　特にサイドトリップとして1日がかりでいくカスケード・サドル Cascade Saddle がすばらしい。ここでは正規のルートを外れてダート氷河 Dart Glacier の末端部分へ行ってきました。
　氷河の表面というのは意外と汚いものです。というのはまわりの岩石を削って流れてくるものだから　あたりまえなんですが、初めて見る人はがっかりするかもしれません。
ターミナル（氷河末端部）に着いてみると　そこにはぽっかりと氷の壁にあいたトンネルがありました。もちろん中に入りましたよ。（ホントはすごく危ないのですが）
　すると汚れた表面とは裏腹に息を呑むような icy blue の世界。壁から天井まで全面が半透明に透き通ったブルー。あまりに幻想的で、感激という意外になんともいえないすごい空間でした。
　バーボンを持っていたので、氷のかけらを拾って、水割りを作って飲んできました。ウンチク垂れるほどのこまかい味のちがいはわからないけど、とにかく気分は最高！でも足元がふらふらで帰り道の2時間はつらかった。

Dart Glacier

　でも最後に言っておきますけど、いちおう常識として氷河のターミナル付近は立ち入り禁止になっているのは覚えておいてください。というのは実際に近くに行ってみるとわかると思いますが、氷河のターミナルというのはちょっとしたビルくらいの高さがあって、しかもツルツル滑る氷だから四六時中いろんなモノが滑り落ちてきます。下手したら家くらいの大きさの岩が落ちてくることもめずらしくないくらい。ほんとうに脅しじゃなくて危険です。

　日本語のメディアではほとんど紹介されていませんが、ニュージーランドには魅力的な山歩きのコースがいっぱいあります。
　ニュージーランドに行くたびにいろいろな面白そうなコースを見つけてしまって、歩きたいところがどんどん増えていきます。今回もまた新たに天然温泉があることを知ってしまい、早くも次に行く機会をねらっています。もうしばらくニュージーランド・オタク状態が続きそうです。

Lake Samner　／　Hope Kiwi Hut周辺　／　Harper Pass Route入口