◆ バックパッカーズを積極的に楽しむ

■ 交流の場

観光立国ニュージーランドには、いろいろなタイプのアコモデーションがある。中でも最もニュージーランドらしい宿と言ったら、やはりバックパッカーズ Backpackers Hostel（日本人同士ではバッパーと略すことがある）だろう。バックパッカーズは、ユースホステルの民間版ともいうべき旅行者向けのシンプルな宿泊施設のこと。

一泊$15〜20でという安さが、貧乏旅行者にはありがたい。しかしバックパッカーズの雰囲気は、日本語でいうところの安宿とはちょっとニュアンスが違う。安さの影でなにかが省略されているというマイナスのイメージはなく、むしろみんな積極的にバックパッカーズを楽しんでいる雰囲気がある。

ドミトリー dormitory という相部屋制も決して「安かろう悪かろう」の結果ではない。いろいろな人と知り合うよいきっかけになる。日本人はシャイで自分から積極的に人に声をかけるのが苦手といわれる。でもドミトリーで同じ部屋になれば自然と話が始まる。また、共同のキッチンで「包丁使い終わったら、次に使っていい？」なんて感じで話が始まって、各国の料理自慢＆試食会になったりする。

夕食後はだいたいみんなリビングのソファで本を読んだり、日記を書いたり、ゴロゴロしていたりする。ギターやピアノがおいてある宿も少なくない。そんなとき、ピアノが弾けたりすると言葉抜きにコミュニケーションの輪ができていく。

98年にフォックス・グレイシア Fox Glacier のユースホステルで出会った日本人は、セミプロのマジシャンで、鮮やかな手つきで技を披露しては宿中の人気者になっていた。

日本人でバックパッカーズを利用するのは圧倒的に若者が多い。でもニュージーランド人やヨーロッパからの旅行者を見ていると、年齢はまったく関係ないようだ。新婚旅行できた人もいれば、定年後に夫婦で世界旅行を楽しんでいるという人もいる。

ユースホステルやバックパッカーズは、若者向け、そんな先入観は日本だけのものなのかも知れない。

■ バックパッカーズ　＋αの楽しみ

世界各国の交流の場として楽しめるバックパッカーズ。でもバックパッカーズの魅力はそれだけではない。完全個人経営のバックパッカーズは、オーナーが趣味でやっているところが多く、オーナーの趣向で付加的なお楽しみがあったりする。

たとえばランファーリー Runfurly という田舎町にある Peter's Farm Hostel はその名のとおり、牧場の広い敷地の中にあるバックパッカーズだ。

ここではオーナーのサービスで、宿泊者に無料で乗馬体験をさせてくれる。広大な敷地のなかには川が流れていて、自由にカヤックを楽しむこともできる。本当に採れるのかはわからないが、砂金探し体験もできる。

ランファーリーという町には、なにか特別な観光資源があるわけではない。交通の便も悪く、なにかのついでに立ち寄るというところでもない。それでもこの宿には毎日宿泊者がいた。彼らはこの宿に泊まるのを目的でこの地を訪れるのだ。

そんな宿がニュージーランド中にはいっぱいある。

ある旅行者が言っていた。

「バンジージャンプとかいろんなアクティビティがあるけど、俺にはそんな高価な楽しみはいらない。$15でバックパッカーズに泊まる、これが最高のアクティビティだよ」

■ バックパッカーズ実用ガイド

別のページでも紹介したが、ニュージーランドでは各地に散らばるバックパッカーズを束ねる組織がいくつかある。そのうち最大のものが"Budget Backpackers Hostels New Zealand"、通称 BBH だ。

加盟する全国265（2000年度）のバックパッカーズのリストと、それぞれの特色、利用者アンケートによる％表示の好感度が一冊の冊子にまとめられている。バックパッカーズを積極的に楽しむためには絶対の必需品。空港や各町のインフォメーションセンター、加盟バックパッカーズで無料配布されている。

冊子の最初の方には、各宿の所在や料金一覧、年に一度行なわれるアンケートに基づいた好感度パーセンテージが記載されている。

好感度は世界各国からの利用者の主観の集大成で、文化によっていろいろ感じ方が違う部分もあり、必ずしも信頼できるというものではない。でも少なくともＢＢＨのレート80％以上の宿でひどく不快な思いをしたことは一度もない。

35％という宿も存在する。そこははっきり言って治安の悪い雰囲気が漂っていた。別の見方をすればおおざっぱで居心地がいいのかも知れないし、値段が安いというメリットもある。一概に数字だけでは判断できない部分もある。

（左）無料で配られているＢＢＨの冊子／(右)年に一度行なわれるアンケートの用紙

ページの後半は、各バックパッカーズの特色が書かれている。英文の羅列で、一瞬読む気をそがれてしまうが、この部分が一番重要。カヤックが無料だとか、最寄りの町から無料送迎ありなどのお得な情報が詰まっている。

右図は先ほど紹介したPeter's Farm HotelのＰＲ文。FREE Kayaking, FREE…の文字が続いている。

この部分をたんねんに読んでいると、いろいろな発見があるはず。

Budget Backpackers Hostels New Zealand のウェブサイト 冊子の内容がＰＤＦやＨＴＭＬで公開されている http://www.backpack.co.nz/

制作・著作　秋場 研 http://homepage2.nifty.com/treknz/ e-mail : AKIBA_Ken