◆Dore Pass Route◆
　ミルフォード・トラックを安く歩く裏技ルート

● 禁断の秘技 ドーア・パス・ルート

天下のミルフォード・トラック Milford Track はその入口にたどり着くまでがかなりやっかいだ。テ・アナウの町から行く場合、まずはバス($11)で Te Anau Down という集落まで行き、そこでボート($38)に乗り換えて入口につく。（値段は 1998 年当時。いまは値上がりしているはず。計$60 くらい？）

バックパッカーなら$1 でも経費を削減したいもの。陸路はヒッチハイクなどで節約することはできてもボート代はどうにもならない。ミルフォード・トラックは高いからやめておこう、そういうトランパーも少なくない。そんな人たちに朗報！　実はボートを使わずにミルフォード・トラックにアクセスするための裏ルートが存在するのだ。

通称 ドーア・パス・ルート Dore Pass Route （ドア・パス? ドーラ・パス?）と呼ばれているこのルート、ミルフォード・ロード Milford Road から沢に沿って峠を越えて、ミルフォード・トラック ガイドツアー用の1泊目の小屋 Glade House ちかくに出ることができる。つまり行きは歩いてアクセスできるのだ。もちろんガイドブックには載っていない超マイナーなコースで上級者向き。誰もがおいそれと歩けるコースではないが、登山経験がある人には興味深いルートかも知れない。

白状すると実はぼく自身はこのコースは歩いていない。2002年度、このルートを歩こうと計画していたが、帰路のトランスポートを確保できなかったのと適当なキャンプ地がなさそうだということで断念した。

ドーア・パス・ルートを抜けてそのままミルフォードトラックにつなげるなら問題ない。しかしそこからみんなのながれと逆行してボートでテ・アナウへ帰ろうとすると、船は朝と午後の２便しかなく、どうしても途中キャンプが必要になる。しかし、船着き場周辺はキャンプ禁止で、Dore Pass Route 上もパスより道路側でしかキャンプ適地がないという。ドア・パス・ルートだけ歩いて帰るのは時間的に難しいようだった。

しかし、実際にこのルートを使ってミルフォード・トラックを歩いた人は少なからずいる。せっかくあれこれと調べたので、ここで情報を整理しておこうと思う。

1. Dore Pass を抜けるのに要する時間は約 6 時間。1 日で抜けられるが、自分の車で早朝出発するのでない限り、前日からスタート地点で幕営する必要がある。
2. ルートファインディングを含む上級者向けコース
3. 大きな川の渡渉が 2 回ある
4. ミルフォードトラックに入ってしまうとキャンプは禁止されている

● Dore Pass Route 概要＆交通

ドア・パス・ルート Dore Pass Route を歩いてみようと思ったら、まずは 1/50,000 の Topo Map D41(Eglinton)を手に入れることからはじめる。この地図でミルフォードトラック入口に近い Glade House のあたりをみるとトラックを示す点線が真東に伸びている。途中で点線は消えてしまうが（トラックからルートに変る）、その延長上に Dore Pass(1390m)がある。パスの反対側も少し下ったところからトラック（点線）が現れて主要道路の Milford Road につながっている。これを逆に辿ればいいわけだ。6 時間程度で越えられる。

スタート地点の場所はわかりにくいかもしれない。ミルフォードサウンドへ向かうバスで途中ドロップオフしてもらうなら、予約段階で、そして当日運転手に Dore Pass へ行くといえば適当な場所で下ろしてもらえる。（$20：2002年度）

もし自分の車やヒッチハイクで行くとなるとなんの標識もないのでちょっとややこしい。目印は Te Anau から行って右側にある Knob's Flat というやや大きめの施設。あのあたりにはなんの建物もないのでたぶんすぐわかると思う。簡単なビジターセンターやトイレ・公衆電話があるので、たまに大型観光バスが停まっていることもある。

そのビジターセンターをすぎたらスピードダウンして、左手に注目する。あたりは広々とした草原になっているが、しばらく行くと再び森林帯に入る。その際にはＤＯＣキャンプサイトに入るための小道が見える。ここまで来たら最徐行。森林に入って最初の左へ入る小道が Dore Pass Route への入口。もしかしたらここにもＤＯＣキャンプサイトの看板が立っていたかも知れない。林のなかで見落としがちな小さな道なので注意。

●ルート

道路から奥まった場所にあるＤＯＣキャンプサイトから歩きはじめて、まずは Eglinton River を渡る。橋などはないが、通常なら膝くらいの深さだという。しばらくはトラックが続くのでそれに従っていく。基本的には Murcott Burn の沢沿いなので、迷う危険は少ない。地図上でトラックが消えた後もポールとルートマーカーは続いている。しかしパス直前は少なくなる。

パスを越えると、まっすぐ下るのではなく、すこし北へ向かうが、そのあたりはしっかりとマーカーが付いているという。急傾斜をほぼまっすぐに下りきると最後の難所 Glade Burn がある。この沢はふだんは膝程度の深さで問題なく渡れるが、雨の後だと通行不能になるという。あたりに快適にテントを張れるような空き地もなく、Dore Pass 越えで一番の問題地点だという。Glade Burn を越えてしまうと、遊歩道のような立派なトラックが Glade House まで続いていく。要する時間は登り 4 時間、下り 2 時間、計 6 時間程度。

言うまでもないけど、上級者向き。このコースを歩くなら、出発前日にはスタート地点に着いてテントで 1 泊、翌日1日かけて一気に抜けるというパターンが適当のようだ。登りの Murcott Burn 沿いに1ヶ所、テントサイトに適したバンクがあり、焚き火の跡もあったという。Pass 上や下りはじめてからテントを張るのは難しそうだ。

ミルフォード・トラックに入ると、キャンプは全面的に禁止されている。Dore Pass Route のどこからがキャンプ禁止区域とかぶるのかは不明。トラックから 500 メートルの範囲内が禁止という説もあるが、要確認。どのみち、地形的にDore Pass Route 上でテントを張れそうな場所はあまりないという。Pass を抜けたらそのままミルフォード・トラックにつなげて、Clinton Hut まで一気に歩いてしまうのが無難なようだ。もちろんあらかじめミルフォードトラックの予約を入れておく必要がある。

ぼくは Dore Pass Route だけを歩こうと考えていたが、帰路のボートの時間を調べると、午前中と午後の２本しかなく、どう考えてもボート乗り場近くでキャンプをする必要があった。しかしキャンプ禁止＋他に適当な場所がないことから断念した。やはりミルフォードトラックを予約してからそれにつなげるかたちで行くのがベストのようだ。もちろんシーズンオフならもう少し自由度が増すが、積雪などの対策も必要になってくる。