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（Mueller Hut Route とは別のコースです） |
Sealy Tarnsの稜線を登り切ったあたりにて |
マウントクック国立公園のトレッキング
ニュージーランドに行くからにはなにがなんでも立ち寄りたいのはマウント・クック・ナショナルパーク Mt.Cook National Park。最初は観光地だからと思ってなにも期待していなかったけど、行ってみたらこれが最高にすばらしかった。
ちょうど影になっていて村からはマウントクックの雄姿を見ることはできない。しかし宿のすぐ背後には切り立った岩壁が迫り、サザンアルプスの山々の氷雪を戴いた姿が目の前に望める。車で気軽にアクセスできる村の中からこんな雄大な景色が見えてしまっていいのだろうかと思うくらいだ。
マウントクックは村にいるだけで十分に迫力の山岳風景を楽しめる。反対にいうと村のある場所がすでに安全圏ギリギリなため、これ以上山に近づこうとするとクランポン（アイゼン）などの器具が必要になってくる。そのためとても魅力的な国立公園ではあるけど、泊まりがけのトランピング/トレッキングとなるとなかなか手頃なコースがない。
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マウントクック村のビジターセンター。町の中心からも年中こんな絶景が拝める。気分はヒマラヤの5000-6000m級！ (写真提供：いまじゅんさん) |
■ミューラー・ハット・ルート
そんなアオラキ・マウントクック国立公園で唯一、登攀器具なしに行かれて、麓とは一線を画するすばらしい景色が楽しめるコースが ミューラー・ハット・ルート Mueller Hut だ。村から歩いて片道３〜４時間ほど。山小屋（ミューラーハット）で１泊して帰ってくるのもよし。時間がなければ日帰りも可能。
ミューラー・ハットは村の背後にあたる峰の稜線の上に建っている。村からの距離はたいしたことはないが、かなりの急登で、森林限界を越えて、完全な山の世界へと突き進んでいく。
ふだん運動不足の人にはちょっときついかもしれない。そのかわりがんばって登り切ったときには、これまでにないダイナミックな景観が待っている。眼下をゆったり流れる氷河と、雪山に囲まれたマウントクック、見下ろす開けた広い谷には出発してきたマウントクック・ビレッジが箱庭のように小さく見える。
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峰の稜線に建つ標高1786mのミューラーハットは、とても4-5時間のウォーキングでアクセスできるとは思えないほどのすばらしいロケーションに建っている。下の写真を見てのとおり、それほど大きな小屋ではない。定員は12名。トランパーの間で人気が高いのでしばしば満室状態になる。キッチンなどの共用スペースもあまり広くはなく、満室状態だとちょっと窮屈かもしれない。バックカントリーハットシステムの基準でいうと程度の悪いカテゴリー２ハットという感じだ。それでいて料金徴収は独自のシステムで、1泊$18もする。
天上界に近いこんな場所で夜を過ごして星なんかを眺めてみるのもすばらしい体験だと思うけど、ぼくは敢えて泊まりたいとは思わなかった。人さえいなければ最高の場所だと思うのだけど。日帰りも十分に可能だ。デイ・ウォークとしてとらえれば、文句のつけようのない最高のコースだと思う。
■完全な山岳世界。決して油断することなく…
ただし、その安全性には十分に気をつけたい。ミューラー・ハット・ルートの前半部分・セアリー・ターンズ Sealy Tarns までは、ふつうの日帰りハイキングコースとしてよく整備されている。しかしそこから上は、整備された「トラック」ではなく、ガレ場を地図とマーキングを頼りに歩く「ルート」となる。
ブラブラと歩く気軽なハイキング気分とは一線を画する領域であることは承知しておきたい。特にミューラーハット近辺は分水嶺の稜線になっているため、天候の変化をモロに受けやすい。麓が晴天でも、急激な天候の変化等、自然条件の厳しさは完全に山岳登山の世界に準ずる。
ミューラーハットを目指す場合は、防寒着、雨具、非常食を含めて、襟元を正してから臨んでほしい。
数年前に、このミューラーハットルートを日帰りで歩いていた日本人女性が行方不明になる事件があった。天気がいい日で、滑落したにしてもまったく姿が見えなくなるとは考えにくい。しかし、いまでもその女性の痕跡はまったく見つかっていない。
また、ミューラーハットへのルートは、地元マウントクック国立公園内では、トランピングガイドではなく、山岳ガイドが担当するコースとして定められている。
他では考えられないほど、気軽に最高の景色が楽しめる場所ではあるけど、決して油断はできないコースだ。
