ワイマカリリ・ハーマンパス・ルート
ワイマカリリ・ハーマンパス・ルート Waimakariri-Harman Pass Route は アーサーズパス・ナショナルパーク Arther's Pass National Park の代表的なルートです。この地方は日本ではいまひとつマイナーですが、中級者以上のトランパーには人気の場所です。フィヨルドランド地方の レイン・フォレスト のしっとりとした雰囲気とはちがって、そこは本格的な山の世界。
アーサーズパス地方のほとんどのトランピング・コースは ルート で、川をさかのぼって パス を越えて、別の谷から抜けてくる、それがこの地方の典型で、ニュージーランドのクラシカルなスタイルでもあります。
このルートも、Waimakariri River を経て Harman Pass 、そして Taipo River を下り、途中から Kelly Range を越えて、国道ぞいに出るというのがおおまかな流れ。ふつうは４泊５日の行程になります。
ふたつの アルパイン・クロッシング があって、そこからの景色は天上界というかんじですし、 リバーベッド の広いワイマカリリ・バレーでは、遠くの雪をかぶった山を眺めながらの道で気分がいいです。
サイドトリップ
１泊目のカーリントン・ハット Carrington Hut は広々とした快適な小屋で、いくつかのサイド・トリップがあるので、数泊のんびりとしてデイ・ウォークを楽しむというのもいいかもしれません。
Waimakariri-Falls （滝）を見に行くコースが有名ですが、ぼくは White River をさかのぼって、谷のどんづまりにある Barker Hut へ行ってきました。このハットは下から見ると岩山の上に建っているように見えて、まるで仙人のすみ家。小屋の周囲はいくつもの氷河に囲まれて、夢のようなロケーションです。日帰りでいったのが残念。ここに泊まるのを目的に来てもいいような場所でした。
ジュリアハット近くのタイポリバー温泉
ワイマカリリ・ハーマンパス・ルートのルートのハイライトのひとつは 温泉 。２泊目のジュリア・ハット Julia Hut から15分ほどタイポリバー Taipo River を下流に行った川ふちに天然温泉が湧き出しています。ほんとうにただ地面から熱い湯がしみだしてきているだけの自然のまま。
晴天が続いていれば、誰かが作ってくれた プール が残っているはずですが、大雨の後なんかだと自分で掘らなければなりません。ちかくに錆びたシャベルが転がってるんですが、もともと岩場なんであまり深くできないんですよね。寝そべってなんとか全身が浸かるくらい。でもそうしているとせまい谷の上に流れる雲が見えたりして、まあ悪くないかんじです。
熱すぎるので川から冷水を引き込んで温度調整する。
３泊目に泊まる Seven Mile Hut は正直驚きました。これがはじめて泊まった カテゴリー４のハットだったんですが、ボロいのなんの。歴史の遺物というかんじで、床、壁はあちこち穴だらけ。ホコリが積もっていて、マットレスのないむきだしのベッドにはネズミかなんかのフンがいっぱい。
雨の日ならそれなりにいいでしょうけど、キャンプのほうがよっぽどマシです。テントは持ってましたけど、せっかくだから泊まってみました。
中で食事をしていると、すごい閉塞感と不潔感で、耐えきれずに外へ出てしまいました。でも、日が落ちてきて中でロウソクを灯すと、これが意外とよかった。ボンヤリと黄色い光にてらされて、古ぼけた雰囲気がまるで開拓時代のよう。ノスタルジックで、今となっては想い出のハットのひとつです。
追記： 2004年現在、Seven Mile HutとDillion Hutの近くに新しい小屋が出来たそうです。場所はSeven Mile Creekを越える手前の Mid Tipo Hut 寄り、Dillon Hut（地形図に記載が残っている）の少し手前になるそうです。
Kelly Range 越えは、かなりしんどいです。 ルート・ファインディング 的な苦労は少ないけど、ブッシュ・ラインのなかの急な登りで景色もかわらず、まるで日本の中途半端な山のような苦しさ。 ブッシュ・ライン を越えてしまえば、足元に朝方出発したハットが小さく見えて、遠くにはタズマン海まで見えたりして疲れも忘れるんですが、そこまでがつらく長い。
レンジ を越えて、その日のうちに下山することもできますが、 Kelly Saddle ちかくの Carroll Hut はなかなかいいロケーションの小屋なんで、天気がよければ泊まってみるといいんじゃないでしょうか。夜、星がすごいですよ。
