Welcome Flat Hot Pools

◆ これぞニュージーランドの秘湯 ウェルカム・フラットの温泉

ウェルカム・フラット・ホットプールズ Welcome Flat Hot Pools は、南島の西海岸、<Fox Glacier> の26キロほど南からスタートする コープランド・トラック <Copland Track> 沿いにある天然温泉。駐車場から歩いて6時間ほど。すぐちかくにはウェルカム・フラット・ハット <Welcome Flat Hut> というＤＯＣの大きな山小屋があるので、食料を多めに持って、数日間のんびりするのにとってもいい場所だ。。

ウェルカム・フラットというのは草原の名前。かつてこの道はマウントクック地方からアルペン越えをして辿り着く場所だった。険しい雪山を乗り越えてついた先に暖かい温泉が待っているなんて、まさにウェルカムと迎えられている感じだったのではないだろうか。

温泉は小屋から歩いて1-2分の場所にある。源泉から流れ出した湯が岩盤を掘っただけの プール (湯船)にたまっている。プールは4つあってそれぞれ 温度が違う。

写真は４のプールから源泉方向を見たところ

源泉は約60℃でさわれないくらいに熱い。そこから離れたいちばん下の広いプールがぬるくて入りやすい。のんびり長湯するのに最適だ。もう一段上のプールは日本人ならなんとか入れるくらいの熱さ。入ると最初は全身にピリピリとくるけど、慣れてしまえばなかなかいいかんじ。湯はやや黄色がかった透明で泉質は不明。ときどき鉄くさいにおいと、かすかな硫黄の匂いがする。

プールの底には緑白色の目のこまかいドロがたまっている。入るとモワーと舞い上がってすぐに沈む。最初はそのぬめりが気になるけど、湯をあがるときにコッヘル（鍋）を手桶がわりにして、上澄みをすくって洗い流せばいい。

目の前には Sierra 山脈の岩肌が広がり、晴れていれば左手の木々の向こうに雪をかぶったピークと小さな氷河が望める。行ったのは２月末で夏の終わりだった。晩秋や早春の雪が残っているころに行ったらさらに景色も格別だっただろう。一般にウェルカム・フラットの温泉へは10月から4月までアクセス可能と言われている。

温泉はもちろんのこと、まわりの景色もよくウェルカム・フラット・ハットの居心地がいいので、体力に余裕があったら缶ビールをたくさんもって行ってゆっくりくつろぐことを勧める。小屋近くの小川の水は冷たく、夏でもスカッとするていどにビールを冷やせる。

夏場の日中は サンドフライ が気になるので、夕方から夜にかけて入るのがベスト。まわりの景色がだんだんとシルエットに変わるのを眺めながらときを忘れる。日が暮れれば天気さえよければ南十字星や、月に照らされる峻険な山の幻想的な景色が待っている。

完全に天然の温泉なので、石鹸やシャンプーの使用は禁止されている。くれぐれも日本の露天風呂と勘違いしないように。また アメーバ性髄膜脳炎 予防のため顔を湯につけないこと。

◆ 注意！

ウェルカム・フラットの温泉までは駐車場から6時間以上歩く。往復には最低1泊2日が必要で、トランピング経験者向き。

川に沿ってをさかのぼっていくだけで極端なアップダウンは少ない。でも足場が悪く歩行時間も長いのでかなり疲れる。6時間というのは慣れた健脚な人の場合で、ほとんどの人は7時間かそれ以上かかっているようだ。とりあえず 8時間 は見ておいたほうがいい。

大雨の後でなければ特に危険な個所はない。でもいくつか致命的にならないていどに迷いやすい箇所がある。日本で山歩きの経験がなく、まるきりの初心者だとちょっと危ないかもしれない。

木につけられた三角形のマーキングや岩にかかれたペイントがあるので見失わないこと。誰かがまちがった作った踏み分け道もいくつかあるし、水溜りで道が寸断されていることもある。地形図が読めたほうが安心だ。

Westland 地方のＤＯＣオフィスで50¢で売っているリーフレット "The Glacier Region - Copland Track to Welcome Flat and Douglas Rock Huts" は最低限熟読しておくこと。

Fox Glacier あたりのＤＯＣビジターセンターの掲示板には週間天気予報やトラック・コンディションの情報があるのでチェックを忘れずに。地形図は Topomap H36 <Mount Cook> 。$12くらい。

追記：2004年12月より、ウェルカムフラット・ハットのカテゴリーが変更になり、1泊$15に値上がりしています。従来の年間パス(アニュアル・ハット・パス)は使用できなくなりましたので、ご注意ください。なお2005年3月現在、公式ブロシュアの修正はされていないようです。また、地元ＤＯＣ職員の間でも情報が錯綜している感があるようなのでご注意ください。(2005.03.27)

◆ ウェルカム・フラットの温泉への行き方

Fox Glacier から SH6(国道6号線)を南へ26キロ、 <Karangarua River> をわたるすこし手前の小道を左に入る。"Copland Track" と書かれた看板があるが、奥まっていてわかりにくい。 Fox Glacier 方面から行くと、むしろ右手の "Historic Place" の看板の方が目につくはずだ。その小道を数百メートル行くと、案内板の立っているカー・パークにつく。

地図上でトラックは <Rough Creek> 上流の橋を通ることになっているけど、水量が問題なければ直接川を渡ったほうがはやい。対岸にオレンジ色の大きな円のマークがあるので目印に。安全面からいえば靴を履いたまま渡った方がいい。

この先、おなじようにルートのすこし上流に橋がかかっている Creek (沢)がいくつかある。橋は基本的に増水時用でふつうは靴を濡らさず岩づたいに渡れるはずだ。

ただ例外で注意が必要なのはウェルカム・フラット・ハットの30分ほど手前の Shiels Creek。ここは傾斜のきつい大きめの沢で橋がかかっていない（地形図に記載があるが実際はない。1997年現在）増水していて通行不可能ならこの先に進むことができない。

引き返すしかないのだが、そのすこし前に Emergency shelter があって、時間的に戻れないときには泊まることができる。シェルターといってもただの岩屋で、かろうじて雨が防げる岩陰。快適な宿泊は望めそうもなく、ビバーグという言葉がぴったりくる。最初からここに泊まることはあてにしないほうがいい。

同じ理由で帰りに Shiels Creek を渡れない可能性もあるので、１日か２日は余分に泊まれるくらいの食料は必ず持っていきたい。

ぼくが行ったときは行きは天気はよかった。でも２泊して、帰る日になったら激しい雨が降りだした。ほかの２組の宿泊者は雨の中を無理して帰っていったけど、食料が余分にあったぼくは迷うことなく連泊した。誰もいなくなって思いのほか快適な時間を過ごすことができた。雨の日のテント泊は最悪だけど、ハットとなると雨もまた楽しい。