北島に比べて温泉の数が圧倒的に少ない南島。手軽にアクセスできて、満足度も高い温泉としては、これまで Welcome Flat Hot Pools (Copland Track) をおすすめしてきた。
ただ、手軽といってもそれはトランパー向けの台詞。まったく山歩きの経験がない人には垣根が高い温泉だったかも知れない。
「山歩きは苦手なんだけど…」、そんな人にもおすすめできる温泉(野湯)が、今回あらたに発見したシルビア・フラットの温泉 Sylvia Flat Hot Pools だ。
この温泉の特徴はなんといっても苦労なくアクセスできること。南島の温泉のほとんどは山中深くに湧くため、どうしても本格的な山歩き（トランピング/トレッキング）が必要になる。ところがこのシルビア・フラットの温泉は国道のすぐ脇の河原に湧いている。国道沿いというと後述の Wanganui River の温泉もあるが、湯温の点でこちらの方が満足度が高くてお勧めだ。
シルビア・フラットはクライストチャーチ Christchurch からウェストコースト West Coast へ抜ける国道7号線 (SH7:State Highway 7) 沿いにある。南島でただ二つだけある整備された温泉、ハンマー・スプリング Hanmer Springs やマルイア・スプリング Maruia Springs へ向かう途中といったらわかるかと思う。
今回（2000年度）の旅行のとき、シルビア・フラットを現地調査したのは日本へ帰る間際だった。前日に訪れた Wanganui River の温泉がいまいちだったため、やっぱり南島で温泉は無理なのかなとなかば諦め似た気持ちで、最後の温泉地へ足を運んだ。
ところがどっこい、シルビア・フラットに行ってみると、それはそれはパーフェクトに近い温泉が待っていたのだった。車を降りて、川沿いの踏み分け道を歩くこと数分。手掘りながら見事な湯船があった。手を触れてみるとまさに適温。ぬるくもなく熱くもない。さらによく見ると周辺には他にもいくつかのプールがあり、それぞれ微妙に温度が異なっていた。
正直、虚を突かれた気がした。これほど見事な天然温泉がこんな身近にあったなんて。シルビア・フラット温泉の脇の道は、これまでに何度となく車やバイクで往復したことがある。温泉情報へのアンテナも張り巡らしていたつもりだったのに、灯台もと暗しというか、ちっとも気がつかなかった。
車さえあればクライストチャーチから2時間ほどだ。クライストチャーチ在住の方なら気軽なウィークエンド・ドライブにもいい。道路脇のピクニックエリアの奥の方にあるので、幕営も可。テントを張ってのんびり星空でも見上げながら入浴するというのもいいだろう。というかその方法がベストかもしれない。というのは実はこの温泉唯一の欠点として、サンドフライがうるさいのだ。サンドフライが活動する日中の入浴は、ふつうの神経を持った人にはちょっと厳しいかも知れない。それほどに大量のサンドフライが飛び交っていた。
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【シルビア・フラットの行き方】
国道7号線 (SH7：State Highway 7) 沿い、マルイア・スプリング Maruia Springs の手前15キロほど。クライストチャーチ方面から行くと、右手に セント・ジェームス・ウォークウェイ St.James Walkway の入り口が見え始めたあたりから速度を落として注意。3kmほど進むと、左手に"Lewis Pass National Reserve"という看板が見える。それを過ぎて森のなかに入るとすぐに"Rest Area 300m Left"というサインが立っているので、それに従って左手の小道に入る。数百メートルの砂利道を行くと開けたレストエリアに突き当たる。ゴミ箱やファイヤープレイスがあり、キャンプの跡があった。
温泉はレストエリアの奥の突き当たりから川沿いにのびる踏み分け道を歩いていく。150メートルほどで左手の河原に掘られた温泉に着く。
