トランピング・コース各論 -アウトライン |
| いきなりトレッキング・コース名を羅列されても困ってしまうという人のために、おすすめコースの概要をまとめました。詳しくはトランピングコース名をクリックして、紹介ページへジャンプしてください。 |
ニュージーランドを世界的に有名にしているのが ミルフォード・トラック Milford Track だ。「世界一きれいな散歩道」として名高く世界中のトレッカーの憧れの場所になっている。3泊4日で歩くよく整備されたコースで、、3日目に越える峠をのぞけばおおむね平坦で、一般的な体力の持ち主なら、特に登山経験はなくとも歩けるだろう。幻想的な苔むした森と、氷河が作ったＵ字谷の雄大さは見物だ。ただ、このコースは特別な保護下にあるので、一日40人の入山制限とそれに伴った予約システムがある。トラック出入り口への交通もバスとボートを乗り継ぐ煩雑さがあり、全体にかかるコストは$200近い。
そこでぼくとしては、もっと手軽に歩けて費用も安く済む($30程度) ケプラー・トラック Kepler Track を勧めている。これはミルフォード・トラックとおなじテ・アナウの町をベースにして歩くコースで、バスなどを使わず町から歩いてトラックにアクセスできるのが大きな魅力だ。完全に一周する周回コースなので、帰りも同様で、交通費は一切かからない。面倒くさい予約制度もないので、思い立ったその日にスタートできる。ミルフォード・トラックとは少々趣が異なり、山の稜線歩きが中心となる。眼下には雲が浮かび、さらに下にはかつての氷河た創り出した湖が望めて気分がいい。トータルバランスでは、もっともおすすめできるコースだ。
ミルフォード・トラックと人気を二分する有名なコースに ルートバーン・トラック Routeburn Trackがある。ここは山岳展望がすばらしいコースとして知られているが、その展望は key Sumit と Conical Hill と呼ばれる二ヶ所のサイド・トリップでいく場所に集中していて、コース全般は散漫な感じだった。
スタートとエンドが離れすぎている点や、予約システムの煩雑さを考えると、私はそれほどおすすめはしない。むしろそのお隣に位置する リーズダート・トラック Rees-Dart Track の方が面白みがあると思う。至るところに氷河が見られ、ダイナミックさではルートバーン・トラックとは一線を引く感がある。ルートバーンとは違って、超初心者向けとは言えない部分もあるが、多少山歩きの経験がある人なら一考の価値のあるコースだ。
ニュージーランドの中でも異色のトレッキング・コースとして ワイトゥトゥ・トラック Waitutu Tracksというのがある。これは1920年代に栄えた国内有数の林業地帯を歩くコースで、かつてのトロッコ線路跡を辿っていく。興味深いのは、高さ36メートル、長さ125メートルもの巨大な陸橋が残っていて、その上を歩けるということ。なんでも木造の陸橋としては現存する世界最大のものだという。廃村になった港町の学校が現在は山小屋として使われていたりして、他とは違ったヒストリカルなトランピングを楽しむことができる。
ニュージーランドは火山国で、あちこちに温泉が湧出している。ところがどういうわけだか山のなかで手つかずで放っておかれている場所がおおい。そんな場所にトランピングでアクセスして、温泉を独り占めしてしまおうという魅惑の場所がある。なかでも有名で快適度が高いのは コップランド・トラック Copland Track だろう。南島のフォックス氷河 Fox Glacier 近郊にある。
あと、南島ではアーサーズ・パス・ナショナルパークを中心にそういった場所がいくつかあるので次項を参照してほしい。
去年から今年にかけて、ぼくはアーサーズ・パス・ナショナルパーク Arthurs Pass National Park にハマッていた。この国立公園は日本のガイドブックではほとんど紹介されていない。しかし実は山好きの人にはたまらないほど魅力的な場所なのだ。
南島の玄関口、クライストチャーチから内陸へ160キロほど入ったところに位置する国立公園で、ここの特徴はとにかく本格的な山。フィヨルドランドのような苔むしたレインフォレストはないかわりに、あちらでは遠巻きに眺めるしかなかった荒々しい山に直接アタックできるのが特徴だ。
日本の登山経験がある人にとっては、ミルフォードやルートバーンといったメジャーなコースは整備されすぎていて、正直もの足りないかもしれない。その点、この地方では眺望のよいちょっとハードで硬派な山行が楽しめる。
歴史的な由来がある Harper Pass Route や Three Pass Trip、温泉が楽しめる Waimakariri-Harman Pass Route, Harper Pass Route, Otehake Hot Springs, Ceder Flat などがある。
ぼく自身は北島は2ヶ月程度しか滞在していないので、あちらの事情にはあまり詳しくない。そんな限られた経験の中からしか語れないが、やはり最大のおすすめはトンガリロ国立公園 Tongariro National Park だろう。ここはニュージーランドで最初の国立公園で、世界で比べてもアメリカのイエローストーン国立公園に次いで2番目に早く制定された場所だ。現在のニュージーランドのエコ・ツーリズムの原点とも言える場所だ。
地球とは思えない荒涼とした火山帯で、トンガリロ・ノーザン・サーキット Tongariro Northern Circuit という3〜4日で一周するコースが有名。なかでもハイライトの景色が集中した区間だけを日帰りであるくコースも人気がある。この場合、トンガリロ・クロッシング Tongariro Crossing と呼ばれて北島でもっともすばらしい「デイ・ウォーク」と言われている。
「北島でもっともすばらしいデイ・ウォーク」(the finest one-day walk in North Island)が出てきたついでに、南島の場合を考えてみたいと思う。南島の場合は冒頭でも書いたミルフォード・トラックが「世界一きれいな散歩道」としてとにかく有名だ。ガイドツアーに参加すれば手ぶらで歩けるものの、踏破には4日ほどかかる本格的なトレッキングで、もちろん費用もかかる。
もっと気軽に日帰りで歩けて、ニュージーランドならではの最高級の景色を堪能できる場所といったらどこか―。候補はたくさんあるのだが、私は独断で ミューラーハット・ルート Mueller Hut Route (Mt.Cook National Park)を挙げたい。
登りはややきついが、それに見合う以上のダイナミックな景色が待っている。
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制作・著作 秋場 研 http://homepage2.nifty.com/treknz/ e-mail : AKIBA_Ken |